組織ドメイン名選択のためのガイド 平原正樹 (one of junet-admin) 1991年12月1日 1993年2月1日改訂 このガイドは、JUNET が発足してから今回日本ドメイン名割当委員会が構成さ れるまでの長い期間、組織ドメイン名の割り当てに貢献し続けた junet-admin の経験に基づいている。 [ 日本ドメイン名割当委員会は、日本ネットワークインフォーメーションセ ] [ ンターおよびそのドメイン名割り当てグループによって置き換えられた。 ] ドメイン名は、組織を表す名称であり、この名称を選択する基準は、主観的な 要素も多く、このガイドでは相反する指針をそのまま記述している。このガイ ドを利用する者は、その組織が置かれている状況、名前付けに対する価値観、 社会的な影響などを考慮の上、組織ドメイン名選定作業の補助として頂きたい。 1. ドメイン名選定の考え方 ドメイン名選択の一つの立場は、ドメイン名は、ドメイン名を名乗る組織のも のであり、その組織が自由に決定できるという考え方である。ドメイン名を決 定する際、アナロジーとして、子供の名前を付けることを想起して頂きたい。 名前は、それを名乗る側の意思が最優先されるべきである。 これに対する立場は、ドメイン名を使う他の組織の人々の便宜を優先し、ドメ イン名の体系を理解し易く、美しくしようとする考えである。ドメイン名は名 前であると同時に電子メイル等における住所でもあるので、一般の利用者には、 何を意味しているか判らないドメイン名を付けられては、多くの人が苦労する ことになる。 全体的な統一性を重視するならば、例えば、大学ならば -u を付け、工業大学 ならば -it を付けると、覚え易く、間違いも少ない。ただし、日本語名称が 同一でも、英語名称が異なっている場合がある。また、統一する必然性はなく、 名称が類似していても、組織としては独立しているのだから、横並びする必要 はなく、オリジナルなドメイン名を用いる方を良しとする考え方もある。 全体的な統一性や正式名称を重視するか、オリジナリティをアピールするかは、 その組織の名称・略称に対する姿勢と、その名称の社会的知名度などを考慮し、 その組織の意思として、ドメイン名を決定するべきである。 2. 属性と JP 定義に基づいて属性を選択する。複数の属性に該当すると思われる場合、いず れの属性にも該当しないと思われる場合は、組織の正確な記述を行なった上で、 希望するあるいは最も適切と思われる属性を選択する。また、法的・外形的な 位置付けによって判断を行なうので、非営利目的の株式会社であっても CO に 属する。 名称に含まれる「〜会社」は CO が、「日本〜」は JP が表現しているので、 <組織名>には含めなくても差し支えない。 3. 略称と衝突 正式名称をそのままドメイン名とするならば、衝突する場合は少ない。一方、 略称を用いると、他の組織と衝突したり、衝突しなくても非常に紛らわしくな ることがある。特に、企業では、3文字略称を使う場合が多く、名称の衝突が 起こり易い。また、ある組織の略称が、他の組織の正式名称と衝突することも 起こりうる。こういった混乱は、ドメイン名はその組織の自由であるから考慮 しないという立場もあるが、他との混同が起こり易いドメイン名を用いること は、その組織にとっても有益でないとも考えられるので、略称を用いる場合に は充分に考慮するべきである。 4. 組織内合意 ネットワークに参加するために新たに略称を作り出すよりは、既に使用してい る正式名称や略称を使うべきである。新たな略称や俗称を選択する時は充分に 検討し、そのドメイン名が組織内での合意を形成するようにしなければならな い。 正式でない通称をドメイン名として用いたために、将来、組織内で反対が起こ り、仕方なく変更申請しても、ドメイン名の変更は、それを利用している多く の人々やネットワーク管理者に多大な迷惑を掛けるため、正式な組織名の変更 などと言った正当な理由なしには行なうべきではない。ドメイン名は印刷物に も載って流布し、変更を行なっても長い期間古いドメイン名が用いられるため、 基本的に、その組織が複数のドメイン名を用いているように例外扱いしなけれ ばならないのである。 [ 変更の手順に関しては、ドメイン名割り当てについての文書で、例外扱い ] [ 期間を定めている。 ] 5. 3文字ドメイン名および略称 ドメイン名として組織の名称の頭文字を取った略称の場合、その略称をその組 織を表す名称として、対外的に公式なものとして使用していることが望ましい。 例えば、名刺や社章、出版物などに、その略称が用いられていることが望まし い。また、その略称が商標などとして登録されている事実も根拠の一つとなろ う。 ドメイン名として組織の名称の一部を省略した場合、上記の頭文字を取った略 称の場合に準じて考える。そのような省略を行なっても、他の組織の名称との 衝突や誤認が生じる可能性が低いならば問題はない。 基本的に、ネットワークに参加するために新たな略称を考案した場合、その略 称が組織内および組織外に浸透するかどうかが判断の分かれ目である。安易な 略称は好ましくない。使用実績のない正式でない略称の場合、組織内での合意、 その略称への思い入れを充分検討するべきである。 6. ドメイン名の長さ ドメイン名の長さは仕様上は充分に長くても構わない。中途半端な省略よりは、 完全にスペルアウトした方が、覚え易いし、入力ミスも起こり難い。別名付け、 ドメイン名のコンプリーション機能、ディレクトリサービスなどを充実するこ とによって、ユーザインタフェース側でも技術的に解決されていくだろう。 現実的には、RFC1032 などではドメイン名の中の<組織名>の部分は 12 文字以 下が望ましいと書いている。これは、ドメイン名を扱う管理者の作業を楽にす る配慮と思われる。また、極端に長いドメイン名は OS やネットワークアプリ ケーションの実装上の制限に引っかかる恐れもあるので注意が必要である。例 えば、幾つかの UNIX の実装では、ホスト名の長さは 32 文字以下であるので、 ドメイン形式でホスト名を設定する場合、組織ドメイン名を極端に長くすると、 組織内サブドメインやホスト名の長さにしわ寄せが来る。また、メイルアドレ スを一般の申請書などに記入する際、名前の記入枠に常識的な制限があるよう に、メイルアドレスの記入枠にも制限があることが多い。 組織ドメイン名の一覧表があるので、他組織の例を参考にオリジナリティがあ り、他組織の人にも親しみ易いドメイン名を選定されたい。 7. 地域名 学校などは地域の名前が付いていることが多いため、地域名そのものを、大学 を表す -u などを付けずに、ドメイン名として採用した場合がある。この場合、 同様に土地の名前を付けた他の学校との類似性に注意しなければならない。 地方公共団体およびその下部組織で GO に属するものに対しても、地域の名前 を付けた例がある。この場合、そのドメイン名は、その地域の地方公共団体の 下部組織をすべて包含するものと解される。 8. 和名 日本語での名称に基づいてローマ字でドメイン名を綴ると国内に対しては親し み易いかも知れないが、ネットワークの国際性を考えると英語名称の方が通り が良い。また、ローマ字で綴ると、ヘボン式と訓令式とで綴りが異なる音を含 んでいると、アドレスの書き誤りを起こし易い。もしろん、日本語での名称を 国際的にも用いようと考えるならば、その意思は尊重されなければならない。 9. ハイフンと大文字化 複数の単語からなるドメイン名を用いる時は、ハイフン("-")で区切るか、単 語の始まりの文字を大文字とするか、いずれかの方法を採ることが一般的であ る。ドメイン名には大文字小文字の区別はなく、使用する者が単語の頭を大文 字で表現し、他を小文字で表現しても差し支えない。なお、アンダースコア ("_")はドメイン名に含むことはできない。 10. ゾーン 申請する者は、申請するドメイン名を使用するあるいは使用する可能性のある ゾーン(領域)を明確にしなければならない。このゾーンが、ここでいう組織 である。例えば、ある会社の研究部門がネットワークに参加する時に、会社全 体を表すドメイン名を申請するならば、申請組織は研究所ではなくその会社で あり、申請者は会社全体というゾーンでのドメイン名の使用に対する責任を持 つ。 ゾーンとして、教育機関、法人等は、社会的に考えても適当である。また、密 接に関連した企業グループなど、単一の管理主体によって結びつけられている 法人群もゾーンと考えることができる。 11. 注意 同一組織内から複数のドメイン名申請が行なわれた場合が少なくない。ドメイ ン名を取得した場合は、組織内の関係する部署に通知し、日本ドメイン名割当 委員会および日本ネットワークインフォメーションセンター(JNIC)が組織内の 連絡係とならぬよう配慮しなくてはならない。 BITNET、UUCP、CSNET、FIDONET のようなメイルドメイン、EDU や COM のよう なドメインネームシステムに登録されているトップドメインと同一の<組織名> は、日本ドメイン名割当委員会によって既に予約されていて、これらの<組織 名>を持った一般の申請は受理されない。これは、JUNET において、省略が用 いられていた歴史的経緯による技術的な制約である。