1997年10月 2日 ドメイン名登録規則(案)提案理由 日本ネットワークインフォメーションセンター JPドメイン名登録検討部会 0 はじめに JPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)のJPドメイン名登録 検討部会では,JPドメイン名の登録業務を公正かつ迅速に行うために,登録規 則の全面的な改定作業を行ってきました。その原案が完成しましたので,今回、 この原案を公表し、広くご意見を求めたいと思います。 この文書では,検討および提案の背景,規則原案の骨子を説明したのち,検 討部会で検討した項目のうち特に重要な項目7点 (1) 凍結されたドメイン名の再度の登録の手続き (2) 登録できないドメイン名の規定の新設 (3) ドメイン名の仮登録制度の新設 (4) ドメイン名の移転禁止に関する基本的な考え方 (5) 登録取消手続き、事務局の決定に対する異議申立に関する規定の整備 (6) 取消事由 (7) JPNICの責任 について説明し,最後に今後のスケジュールを示しております。 ご意見は電子メイルでお受けしております。メイルアドレスは本文書の最後 をご覧ください。 1 検討および提案の背景 インターネットの利用の急速な拡大に伴い、当センターのJPドメイン名の登 録件数は、1994年4月1日現在 1,505件、以後 1995年4月1日現在2,625件、1996 年4月1日現在6,432件、1997年4月1日現在 19,453件 となっており、本年10月1日 時点での登録ドメイン数は 28,927件に至っております。 また、周知のとおり、インターネットが社会経済の基盤として理解され、利 用されつつあるという状況から、ドメイン名と知的所有権との関係その他の法 律的見地からの検討などについては、国内的にも国際的にも、関心が高まって おります。 当センターとしても、このような状況変化に伴い、1996年11月には新しいド メイン名空間(ne.jp)の新設を行い、また、各種の規定の明確化を図ってきました が、上記の状況変化に対応するためには、ドメイン名登録に関する様々な規則を 一元化し、再編することが必要であると強く認識されるにいたりました。 そこで、JPNIC運営委員会内に設けられたJPドメイン名登録検討部会におい て、1996年より JPドメイン名登録に関する規則の再検討作業を行って参りま したが、このたび、検討部会として JPドメイン名登録規則(原案)を作成しま した。 今回、この原案を公表し、広くご意見を求めたいと思います。 2 規則原案の骨格 ドメイン名登録に関する新しい規則は、規則原案と、原案本体と同様の効力を 有する「技術細則」、そして登録などに関連する申請書等の書式、ドメイン名 登録規則の細部に関する規定の3部分によって構成されております。 このうち、今回公表し、ご意見を求める原案は、登録できるドメイン名の種 類や登録の要件などの実体的な規定と、登録手続きやこれに関連する手続きに 関する規定を骨格としており、すでにドメイン名を登録されている方にも適用 されることになるものです。 原案の立案の意図は、ドメイン名に関する諸手続きに関する規定を文書とし て一元化し、かつ、その手続きを明瞭にすることにより、ドメイン名登録を 公正かつ迅速に行うことにあります。 なお、「技術細則」については、主として技術的諸事項を定める規定であり、 「ドメイン名登録規則」の制定による修正を行ったうえで、原則として現行の 技術的な規定を一元化するという観点からの立案作業を行っている段階です。 また、申請書式につきましても、できる限り従前のフォーマットに必要最低限 の修正を加えるという方針により逐次作成していきたいと考えております。 3 原案の重要な課題 原案の内容は、別添のとおりですが、当検討部会において特に重要な課題で あると認識された事項は次のとおりです。 (1)凍結されたドメイン名の再度の登録の手続き 現在のドメイン名登録の運営では、廃止されたドメイン名については、一定 の期間、その再度の登録をしないという取り扱いを行い(この取り扱いを「凍 結」と呼ぶことがあります)、凍結期間が終了した後には、先願による処理を 行っておりました。しかし、特定の時点で多くの申請が同時に行われる場合に、 先願による処理を行うことは必ずしも適正とはいえないと思われる例もあり、 今回 1996年11月から1997年3月の間に行った「NEドメイン」新設の際に採用し た同時申請の取り扱いを参考にして、先願処理の例外的取り扱いを定めること としました。 原案では、凍結期間満了の1か月前からその期間満了のときまでに複数の申 請があった場合には、同時に申請が行われたものとみなして、申請者全員の合 意や抽選によって登録者を決定するという考え方を採用しています。 (2)登録できないドメイン名の規定の新設 JPNICは、ドメイン名はインターネット上における識別のために使用され、 それ以上の意味は持たないという従前からの基本的な考え方を維持しておりま す。しかしながら、インターネットユーザの拡大やこれに伴うドメイン名登録 数の増大により、社会的に容認されない呼び方のドメイン名の登録申請が行わ れる虞も否定できない状況にあります。このような万が一の場合に備え、社会 的に容認されない呼び方のドメイン名の登録申請が行われた場合には、理事会 または理事会の指定する3人以上の理事で構成する審査委員会の審理を経たう え、その申請を不承認としうる制度を新設しました。 この制度は、従来のドメイン名の考え方とはやや異なるものであり、広くご 意見を求めたいと存じます。 (3)ドメイン名の仮登録制度の新設 ドメイン名の登録は、組織を単位として行われています。しかしながら、ド メイン名の登録数の拡大に伴い、まだ「組織」として成立していない段階でも 将来使用するドメイン名を登録したいとの要望も出されるようになりました。 検討部会としても、このような要望に応える制度の新設が必要であると考え ており、主として、商号の仮登記の制度を参考にしながら、一定の段階にある 設立中の組織に対して、ドメイン名の仮登録を認める制度を新設しました。た だし、この仮登録ではドメインネームサーバへの設定(登録)はできないことと されております。 (4)ドメイン名の移転禁止に関する基本的な考え方 JPNICでは、ドメイン名の登録について先願の原則を採用し、また、1組織 1ドメインの原則を採用して、ドメイン名資源の有効かつ公正な利用を図って おります。そして、ドメイン名資源の有効かつ公正な利用という観点か らは、ドメイン名の売買を許容することはこの目的に支障を来すものと考えて おります。しかしなから、もっぱら利得の取得だけを目的とせず、例えば、営 業譲渡など法律上の根拠があり、かつ、ドメイン名の移転を必要とする合理的 な理由がある場合にまで、ドメイン名の移転を禁止することは、必ずしも妥当 でないという側面もありました。JPNICでは、すでに、会社組織の合併の場合 にはドメイン名の移転を許容しておりましたが、合併以外にも、その移転を許 容するのが適切であると考えられる事例に関するお問い合わせも寄せられてお ります。 そこで、原案では、従来ドメイン名の移転を許容していた合併に加え、営業 譲渡、商法上の親子会社間の譲渡などの場合にも、ドメイン名の移転を許容で きる制度を制定しました。なお、検討部会においては、ドメイン名の移転を許 容する場合をより拡大してはどうかという議論も行われており、もっぱら利得 の取得だけを目的とする移転のみを禁止するという方向も検討されました。 これらの点につき、広くご意見をお寄せください。 (5)登録取消手続き、事務局の決定に対する異議申立に関する規定の整備 JPNIC では、従来からも一定の事由がある場合には登録されたドメイン名に ついて登録取消を行うこととされておりました。ただ、その手続きに関するルー ルは必ずしも明確なものではなく、この手続きをより公正かつ適切に行うため のルールを整備する必要がありました。原案では、登録取消に関する審査は理 事会または理事会が指名する3人以上の理事による合議体で行うこととし、ま た、審査を受けるドメイン名の登録者が意見を申し述べる機会をつくるなど、 の規定を設けました。 また、事務局が行った各種の申請に対する決定についても、異議を申し立て る手続きを新設し、登録取消と同様の手続きにより審査するという制度としま した。ただし、定型的に異議の申し立てを認める必要がない場合は、この異議 申し立てをすることはできないものとしております。 (6)取消事由 周知のとおり、現在、ドメイン名と商標、商号などの知的所有権との関係が 内外で大きく議論されております。検討部会としても、種々の議論を参考にし ながらこの問題を検討しましたが、現時点においては 直ちに「ドメイン名は インターネット上で識別のために利用されるものである」という基本的な認識 を変更すべきであると判断することは、早急にすぎるという結論に達しており ます。ただ、知的所有権に関する議論との関係で、裁判所がドメイン名の使用 を差し止める旨を決定するというケースも予想され、このような決定が行われ た場合には、JPNICとしても、これを尊重する必要があります。そこで、原案 では、第三者から判決等の提出があった場合には、そのドメイン名の登録を取 り消す という規定を設け、また、登録されたドメイン名それ自体が社会的に 容認されず、社会的相当性を欠落する方法で使用された場合にも、その登録を 取り消し得るという制度を設けました。 この考え方は、今後のドメイン名の社会的意味についても重要な関連があり ますので、広くご意見をお寄せください。 (7)JPNICの責任 いうまでもなく、ドメイン名の登録はインターネットにとってきわめて重要 な業務であり、これに関するJPNICの責任は重要です。 そこで、ドメイン名の登録やドメインネームサーバの運用などについて JPNICが負担すべき合理的な責任範囲を定める必要があると考え、検討の結果、 ドメイン名登録などについてJPNICに故意・過失があった場合には、受領した 登録料を限度として損害の賠償をし、それ以外の場合には、損害の賠償をしな いという明文の規定を設けました。 4 今後のスケジュール 検討部会としては、今回の公表に引き続き、次のスケジュール を目途としてドメイン名登録規則を制定・施行したいと考えております。 1997年10月 2日 原案公表・意見聴取 1997年10月31日 意見聴取の締め切り 1997年12月 1日 規則公示 1998年 3月 1日 規則施行 原案全文は、別添のとおりですが、検討部会としては、より良いルール作成 のため、上記3の重要な課題や、それ以外の事項についてもご意見をお寄せい ただきたいと考えております。つきましては、1997年10月31日までに、下記 電子メールアドレスまで、ご意見をお寄せください。 受付窓口: goiken@domain.nic.ad.jp 以上