2000/04/26 運営委員会 資料 5-4 日本ネットワークインフォメーションセンター 運営委員会殿    「JPドメイン名紛争処理方針」に関する第一次答申について                       ドメイン名の紛争解決ポリシー                       に関するタスクフォース ドメイン名の紛争解決ポリシーに関するタスクフォース(以下「DRP-TF」)は、 昨年12月15日の設置以来、当センターが登録したドメイン名の登録と使用から発 生する、登録者と第三者との間のドメイン名に係わる紛争処理に関する規約であ る「JPドメイン名紛争処理方針」(以下「処理方針」)並びに、その処理手続に ついて定めた「JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則」(以下「手続規則 」)の策定に向けて検討を進めて参りました。 ここに、運営委員会に対する第一次答申として二つの文書およびその補足文書を 提出いたします。  提出文書   ・「JPドメイン名紛争処理方針(第一次答申案)」(資料5-4-1)   ・「JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(第一次答申案)」(資料5-4-2)   ・「JPドメイン名紛争処理方針」の構成と骨子(資料5-4-3)   ・「JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則」の構成と骨子(資料5-4-4)   ・「JPドメイン名紛争処理手続」の流れ(資料5-4-5) なお、以下に DRP-TF における検討状況について報告いたします。 ■ 方針策定に当たっての DRP-TF の取り組み方 ここ数年 .COM を中心にサイバースクワッティング(ドメイン名の不正な登録・ 使用)の問題が取り上げられております。米国ではすでに幾つかの裁判例が見ら れますが、日本では一部商標などに抵触するドメイン名の存在が指摘されてはい るものの、裁判によってその解決を求めるという動きは少ないというのが現状で す。 日本で紛争が少ないのは、「一組織一ドメイン名」「ドメイン名の移転禁止」な どの JPNIC が持つ原則によるところが大きいと考えられますが、JPNIC では、 今後これらの原則を廃止する方向にあり、別途サイバースクワッティングの対策 が必要となってきております。 gTLD の世界においては、ICANN が昨年10月に「統一紛争処理方針」を承認し、 12月1日からレジストラによる同方針の採用が開始されるとともに、合わせて同 方針に基づいて紛争処理の手続を行う紛争処理機関もサービスを開始しています。 ICANN の「統一紛争処理方針」の大きな特徴はミニマル・アプローチという点で す。これは、正当な権利者間の紛争は対象とせず、不正なドメイン名の登録・使 用のみを対象とするものです。また、これを実現するための紛争処理手続は、従 来の裁判でも仲裁でもない新しい紛争処理方法の模索であると言えます。 DRP-TF は、これらの特徴は JPドメイン名における紛争処理においても有効なも のであるとの判断から、ICANN の「統一紛争処理方針」のローカライズというア プローチをとりました。 ■ ICANN 統一紛争処理方針の何を採用し、どこをローカライズするのか ICANN 統一紛争処理方針および手続規則の次の特徴については JPドメイン名に おける紛争処理においても有効であると考え採用することといたしました。  ・適用対象となる紛争   - 不正なドメイン名の登録・使用のみを対象とする。   - 正当な権利者間の紛争は対象としない。(これらについては、従来の裁判    ・仲裁にて扱ってもらう)  ・不正な目的のための登録・使用についての判断基準   - 実費金額を越える対価で転売することを目的に登録   - 商標権者によるドメイン名使用を妨害するために登録し、そのような妨害    行為が複数回行われているとき   - ライバル会社の事業を混乱させることを目的に登録   - ユーザーの誤認混同をねらって第三者の商標でドメイン名を登録・使用   (ただし、これらに限定されない。)  ・ドメイン名の正当な登録・使用についての判断基準   - 紛争についての通知を受ける以前から、不正な目的を有することなく、当    該ドメイン名またはそれに対応する名称を使用していたとき   - 商標登録をしているか否かにかかわらず、当該ドメイン名の名称で一般に    認識されていたとき   - 当該ドメイン名の使用がユーザーの誤認に乗じて利得を得る目的でないと    き、または、申立人の商標の価値を毀損せしめるような目的ではない非商    業的または公正な使用であるとき  ・紛争処理手続への登録機関の非関与   - 登録機関は紛争処理手続に関与しない。   - 登録機関は裁定結果に責任を負わない。  ・救済措置   - 申立人に対する救済措置は、当該ドメイン名の取消または移転に限定。   - 損害賠償はなし。  ・裁判所への出訴   - 紛争処理手続の開始前、継続中、終結後のいずれの段階でも出訴は妨げな    い。   - 取消・移転の裁定が下されたとき、登録機関はその実施を10日間留保。こ    の間、登録者が出訴した場合、裁定結果の実施は見送り。(紛争処理手続    の非拘束性)  ・紛争処理手続の特徴   - 低費用(WIPO は US$1,000/1件)   - 短期間(審理は14日間。全体で55日程度)   - 非拘束(裁定結果に不服の場合は裁判へ)   - 簡易(審問はなく書類ベースで審理) 一方、日本の法制度および調停・仲裁機関の制度を考慮し、それらに合わせてロ ーカライズを試みた部分は次の点です。  ・準拠法の設定   - 処理方針およびそれに基づく紛争処理手続は日本法に準拠するものとする。  ・申立書・答弁書の送付方法   - ICANN の手続規則では、当事者間で直接送付することが規定されているが、    日本では間に紛争処理機関が入ることが通常であるため、JPドメイン名紛    争処理手続では、当事者間の直接の送付はやらないこととし、紛争処理機    関が間に入る形とした。   - gTLD の登録においては申請書に記載される連絡先が正確でない場合が多    いことから、申立書の送付があらゆる関係者(登録担当者、技術連絡担当    者、経理担当者、Webサイトに掲載されているE-mailアドレスおよびメー    ルリンクなど)に送られるように規定されているが、JPドメイン名紛争処    理手続では、登録組織の代表者および登録担当者を基本とすることにした。   ■ DRP-TF での議論のポイント DRP-TF での議論の中で特に重点的に行われたもの、あるいは、判断が難しいと されたものは以下の通りです。  ・紛争の根拠となるものは「商標」に限定すべきか。  ・不正な目的のための登録・使用についての判断基準は妥当か。  ・実体法上の手当がない現在、裁定結果が出た後の裁判は何を根拠とするのか。  ・紛争処理手続は発信主義で良いのか。 ■ 現行の登録規則との整合性について 今回策定した処理方針は、登録規則と一体化されるものです。処理方針の採用に 伴って、現行の登録規則は次の点で改訂が必要になると思われます。  ・紛争処理方針およびJPドメイン名紛争処理手続への言及。  ・JPドメイン名紛争処理手続の裁定結果による取消・移転を可能とすること。  ・すでにドメイン名を保有している申立人への移転という裁定結果が出た場合、   1組織1ドメイン名原則との対応をどうするか。 ■ 紛争処理機関について JPドメイン名紛争処理手続を行う紛争処理機関については、現在、一部仲裁機関 と協議中です。 ■ 今後のスケジュール 今後のスケジュールは次の通りです。  ・2000年4月26日 : 運営委員会に第一次答申  ・2000年4月下旬 : 一般からのパブリックコメント募集開始  ・2000年6月上旬 : パブリックコメントの締切  ・2000年6月中旬 : DRP-TF によるパブリックコメントの検討作業  ・2000年6月下旬 : 運営委員会に最終答申  ・2000年7月   : 「JPドメイン名紛争処理方針」の公開  ・2000年10月  : 「JPドメイン名紛争処理方針」の発効 以上。