30 亡びゆくリキシヤマン

甲府驛に下りる人は驛前の圓タクの洪水に交つて、おぼつかなくも客を待つてゐる、[# 原本では「。」だが「、」と思われる]かうした人力車夫の姿を見受けて一寸異樣な感に打たれるだらう。
スピート時代の現今に、將に亡びつゝあるこの車は、わずかに昔の名殘をとゞめて、恐ろしくも移り來し交通機關の變遷を物語つてゐる。
然しドクターと、シンガーの家ではまだ當分はなくてはならぬものかもしれない。

(花形 榮)


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